CMによる完全外断熱住宅
新しく造成された住宅地に建つ住宅である。
周囲には住宅展示場を現実に置き換えたかのような、レディーメイドの商品住宅が立ち並び、色とりどりの工業製品の外装が目に入ってくる。
クライアントは夫婦とまだ就学前の子供二人。新規に土地から購入し、建物の建築に廻せる予算は限られていた。山形県村山市という土地柄、断熱性能にそれなりのスペックを要求されるのは当然の事であるが、クライアントは自分で調査を行い外断熱(外貼断熱)を採用することが前提条件となっていた。
要求される諸室から逆算する坪単価は40万円前半となり、要求事項の幾つかを諦めていただく事も考えたが、最後の手段としてCM(コンストラクション・マネジメント)による分離発注施工の提案を行い採用された。
我々設計事務所が代理人となり、各専門工事業者(基礎屋、大工など)と直接クライアントが契約発注し、工事監理者が直接現場を取り仕切るこの方法は、一般的な一括請負施工業者が介在しないため、その経費分は純粋に減額可能であるが、その反面設計者の負担は通常業務の比較にならないものであった。要所要所で発生する小さな問題が現場の進捗に影響を与えぬように、毎日朝晩現場に通って直接現場でスケッチをおこす日々の繰り返しであった。結果として通常では考えられない値段で高スペックな住宅ができたと自負している。また、我々が得た経験もその後の業務に大きなプラスとなる事が多かった。常に制作サイドの納まりを考慮のうえ、金物一つまで設計者がコントロール出来るようになった事で、より濃密な設計を行う事が出来るようになった。